実験と研究


  • 備中産鉄鉱石  1
  • 備中産鉄鉱石 2
  • 備中産の鉄鉱石 ~鍛え1~

  • 備中産の鉄鉱石 ~鍛え2~ 
  • 備中産の鉄鉱石 ~短刀製作 ~ 
  • 備中産の鉄鉱石 ~短刀製作・焼き入れ ~

備中産の鉄鉱石 1

鉄鉱石でタタラ製鉄

1
作刀場に来場された方から備中産の鉄鉱石をいただきました。
古代、タタラ製鉄で砂鉄を使う前は鉄鉱石だったと聞きます。
鎚で叩き割った断面です。光沢があります。
材料の鉄鉱石は17㎏使用しました。

鉄鉱石

2
いただいた成分分析表によると今回の鉄鉱石の鉄分は64%です。いつも使用している砂鉄は84%前後です。
 溶け易いように細かく割りました。白っぽいのは不純物を分離させる為の牡蠣殻を混ぜているからです。いつもより多めに入れました。

鉄鉱石でタタラ製鉄

3
タタラ炉の覗き穴から様子を確認しながら操業を進めます。
鉄鉱石は還元しやすいと聞きます。還元の温度帯でもなるべく低温を狙ってタタラを吹きました。

鉄鉱石の鉧

4
大きな塊がとれました。
この段階では鉧だけではなくノロが多量についています。

タタラの結果

5
ノロを取りました。画面右の鉧は比較用に置いた砂鉄の鉧です。
17㎏の材料が2㎏の鉧になりました。
…おや?
5㎏は超えると思っていたのですが…。
これも一つの結果ですね!

6
タタラ操業中に出たノロ。
砂鉄のノロは表面がツルンとしていますが、鉄鉱石のノロは細かく毛羽立ったようになりました。
流れ出るノロの温度と粘度は砂鉄のものとほぼ同じ様子でした。
 

7
今回は操業温度が高過ぎると思っていました。その後タタラ製鉄炉の内側等を細かく調べた結果、もっと温度を上げた方が良いであろうと思い至りました。


備中産の鉄鉱石 2

1
御津作刀場に来場された方からいただいた備中産の鉄鉱石を製鉄しました。
第2回!
古代、タタラ製鉄で砂鉄を使う前は鉄鉱石だったと聞きます。
材料の鉄鉱石は15.5㎏使用しました。

2
タタラで使いやすいようにある程度の大きさまで砕きました。
今回も鋼とノロが分離しやすいように牡蠣殻を一握り入れています。

3
タタラ製鉄炉の温度を上げていきます。
前回はどうやら操業中の温度が低かったのではないかと思い、今回は少し高めの温度で操業しました。

4
狙った通りに高めの温度で操業できました。
鉧はひと塊ではなく4つ(羽口の数)に完全に分かれていました。いつもの砂鉄なら中心でくっ付いています。
もしかしたら粘度が高くて炉の中心まで流れなかったのかもしれません。

5
鉧?
高温時に火箸で持った感じは柔らかく、大きさの割には軽い。
焼きが入っているはずですが銀色がほぼ確認できませんでした。鉄鉱石の鉧特有らしいのですが。

6
ノロを取り払ったら随分と小さくなりました。


7
合計で3kg。
鉧は小さいものの、操業温度は良かった様です。
今回は温度が判明した、鉧がきちんと四分割、四つの鉧が大きさ出来ともに同じ雰囲気である、と言う事が解りました。

8
今回のノロ。
表面の雰囲気、色、粘度は砂鉄のものと同じ様子でした。
やはり前回は温度が足らずに還元反応自体も不完全であったと思われます。

9
今回のタタラ製鉄では、前回の問題点を解決できましたが、歩留まりについてはもう一工夫の必要があります。
思いついた改善方法がいくつかあります。

備中産の鉄鉱石 ~ 鍛え 1 ~

古墳から出た剣の復元を試みます。
備中では古代から小型のタタラ製鉄が行われていた跡が多数発掘されています。原料には砂鉄が使用されていましたが製鉄史初期には鉄鉱石が使われていたのではないかと言われています。

1
 前回製鉄した鉄鉱石の鉧を鍛えます。
1つ約700gです。

2
 沸かしてまとめた時点で鉧①は500gになりました。
 次に画面右の鉧②は沸かしまとめて400g。

3
 鉧①に②を載せて沸かして1つに合わせました。問題なく付きました。
 砂鉄の鋼と比べて特に大きな違いは感じられません。

4
 鉧をまとめている時には気が付きませんでしたが、炎の色が違いました。
鋼を火に入れてすぐは青い色が出ていました。同時に緑色の炎も出たり消えたり、写真右側に確認できます。
 いつもの砂鉄鋼では紫の炎が温度の上昇に伴い赤みを帯びます。

5
 鋼が沸いてくると青い炎は出なくなり緑の炎だけが出ていました。
今回は折り返し鍛錬をせずに無鍛えで進めます。
 鋼の量が不安なので鉧③をたしています。全部で1.3㎏、これだけあれば足りるでしょう。

6
 鉧①に②と③を載せて沸かして十分に鍛着。そこから3回沸かして鍛着面をなじませました。なんだか脆い感じです。大小のクラックが入りやすいので急な変形はさせないように気をつけます。
 ここまでで鋼を打ったのは平面だけです。

7
 鋼の小端(側面)を打った途端に鍛着面が剥がれました。
さっきまでしっかり付いてたじゃん!
これは…どうした事でしょう。

8
鉄鉱石鋼同士では鍛着はしても変形には耐えられないようですね。
原因として、鍛接面にもクラックが入っている、炎の色から見えるように良くない成分が入っている。などが考えられますね。

9
鉧3つ分に剥がれました。
今後、砂鉄鋼と混ぜてみようと思います。
 砂鉄鋼と鍛接できればやりようはありますからね。もし駄目ならタタラ製鉄の時点で砂鉄と鉄鉱石を混ぜてみましょう。

10
今回は剣にまではできなくて残念でしたが鉄鉱石のみの取り扱いの結果が得られました。
 砂鉄鋼と混ぜても鉄鉱石の性質は刀剣に出ます。比較ように砂鉄鋼のみの剣も作る予定です。
 今後もお楽しみに!

備中産の鉄鉱石 ~ 鍛え 2 ~

上記の続きです。
鉄鉱石鋼同士ではどうやら鍛接が出来ても小端を打つと剥離してしまうようです。
そこで、砂鉄鋼となら鍛着出来るかどうか試してみます。順調にいけばそのまま進めます。

1
 砂鉄鋼。これで梃子皿を作り、その上に鉄鉱石鋼を積んでいきます。

2
 梃子棒と土台の梃子皿を作りました。
 鉄鉱石鋼は剥がれるのなら剝がしておいた方が良いだろうと思い、赤めて叩いたら砕けました。これ以上はクラック以外で割れそうにはありませんでした。
 準備良し!

3
 梃子皿には3つだけ載せました。鉄鉱石鋼同士が接触しないように間隔を開けています。
 何段もまとめて積むと間にノロを噛むので、沸かして綺麗な面を作ってから次の鋼を載せます。

4
 沸かし。真ん中のが付きません。2回沸かし直しましたが、付きそうにもなりませんでした。
 前後のは最初の沸かしでよく付いていたように見えました。
鉄鉱石鋼は追加せず、折り返しに入ります。

5
 青色部分が鉄鉱石鋼です。せっかくなので真ん中で切り離しそのままの向きで載せて沸かしました。
 これで鉄鉱石鋼同士が当たらなくなります。

6
 切り離してはいますが、これで折り(切り)返し1回目です。
 写真が小さいので確認できませんが小端を見ると、いまいち鍛着具合が良いとは言えません。しっかり何度も沸かしていきます。

7
 かなり鍛着した感じが良くなりました。割れそうな感じがありません。小端打っても大丈夫でした!
 普段は沸かし3回で1回折り返します。割れないように少し延ばして沸かしてを7回繰り返しました。

8
 折り返し2回目。
 纏まってきましたが最初と比べてであり、良くはありません。
 この鋼は鍛着の具合と温度の掛け方の実験にします。

9
 折り返し二回、表。
 根本に段差が見えますが際まで鍛着出来ています。面も綺麗になっています

10
 裏。
 こちらも面は綺麗なのですが、根本付近に見える段差が何度沸かしても消えませんでした。5mmぐらい切れています。

11
 小端。
 鍛えの層に沿って大小のクラックが見えています。鍛えの層とは関係無しに入っているクラックもあります。
 鉄鉱石鋼を内側に入れたからといえども、なんとなく砂鉄鋼の方が減っているような気がします。なんとなく。

12
材料が豊富には無いので、今回、姿の参考には古墳からの出土品で小振りな短刀を参考にします。
あと2回ぐらいは折り返しても大丈夫かもしれません。材料が残れば傷が出てもそのまま作ってみる予定です。

13
鉄鉱石鋼同士では付くのか、砂鉄鋼とでは付くのか、沸かしの温度の高低は。一通り疑問に考えていた項目に手を出せたのは収穫でした。
 鉄鉱石は単品で使えるのでしょうか?

14
鉄鉱石の使用は鍛えにも考察の必要はあると思いますが、そもそもタタラ製鉄の改良が必要ではないかと感じました。タタラの吹き方が根本的に違うのか、砂鉄と混ぜて吹いた方が良いのか。

15
 鉄鉱石の取り扱いについては考えられる方法をたくさん思いついて楽しい限りです。
 しばらく間が開くと思いますが、次回もお楽しみに!

備中産の鉄鉱石 ~短刀製作 ~

上記の続きです。
鉄鉱石鋼と砂鉄鋼を混ぜた短刀を作ります。比較用に砂鉄のみでも短刀を作ります。
古代ではどの程度鍛えていたのか分かりません。折り返し鍛錬はしていないかもしれませんね。しかし無鍛えではどうにもなりそうにありません。今回はなるべく少ない折り返し回数にしておきます。

1
 上記の続きです。
4回折り返して鍛えた時点で、はじめと比べて鉄が綺麗になっているように見えました。もう1回鍛えて鉄を馴染ませて終わりにしました。5回鍛え。
いつもの砂鉄鋼と比べると表面はかなりガサガサしています。

2
 沸かし延べ
16cmの短刀にします。
大小のクラックが多数入っています。
赤めている時は結構綺麗だったのですが。冷めてからクラックが進行したのか、見えやすくなっただけなのか。

3
 火造り
沸かし延べのまま大雑把に打ち出しました。とても硬い!鉄鉱石の成分が多く残っているのでしょうか。
クラックが深そうです。処理する為に大きく作って削り落としていく事にしました。
水打ちをしていないので鉄肌が多く付いています。

4
 火造り・棟側
 約10mmの重ねです。
焼き入れ前で6mmにする予定。
角からクラックが入ってきているようです。これだけ削れば丁度クラックを削り切れるだろうと思います。

5
 火造り・刃側
約5mm。
こちら側も、もれなくクラックまみれです。鍛え割れも確認できます。
火造りと言うより削り出しです。

6
 鉄肌を軽く取って確認。
このクラック、削って取れるのかな?
取れなくても進めます。

7
 砂鉄鋼
鉄鉱石の土台に使用したものと同じ鋼です。いつも使っている砂鉄鋼。比較用に鉄鉱石を混ぜていないものを作ります。鍛え回数も同じ5回です。

8
 砂鉄鋼・素延べ
写真が小さくて見にくい!鍛え肌がよく見えますね。
鍛え回数5回とは、普段の作刀であれば下ごしらえができただけです。

9
 焼き入れ前
上側・鉄鉱石鋼を使用。
下側・砂鉄鋼のみ。
割れ(クラック)が思いの外取れました。焼き入れ前の段階でこんなに鍛え肌が見えるとは。

10
 予想に反してうまくいっています。
この後、焼き入れで刃切れが来ないように祈っておきます。
お楽しみに!

備中産の鉄鉱石 ~短刀製作・焼き入れ ~

上記の続きです。
鉄鉱石鋼と砂鉄鋼を混ぜた短刀を作ります。比較用に砂鉄のみでも短刀を作ります。

1-鉄鉱石と砂鉄の混合
2-砂鉄のみ
古墳からの出土品という事もあり、少しナイフのような姿にしています。
表面の酸化膜を取って焼き入れの準備が出来ました。

1-鉄鉱石と砂鉄の混合
2-砂鉄のみ
焼きを入れました。不覚にも土置きの写真を撮っていませんでした!
二本とも同じ形に土を置き、同じ温度で焼きを入れています。

向きが逆になっていますが
上―2の砂鉄のみ
下―1の鉄鉱石と砂鉄
です。
刃文と肌の確認の為に希硝酸で鉄を反応させました。

荒い砥石で酸化膜を取ります。
普段焼きを入れて鍛え肌の模様が見えるのは地(じ/黒い部分)で、刃(焼きが入って銀色の部分)はほぼ銀一色になるのですが。
この段階で刃にここまで肌が出るとは。焼き入れ前から肌の模様が出てたしこんな物なのでしょうか。

砂鉄のみ
砥石目が残っているのはご愛敬。
目立つほどの傷も出ず、多少乱れているものの土置き通りに刃文が入っています。

鉄鉱石と砂鉄の混合
写真では刃が白っぽく見えますね。
実物を見ると肌が出過ぎている為か、はっきりとは刃文が確認しづらい出来になっています。

鉄鉱石と砂鉄の混合
角度を変えると刃文が見えなくなりますね。